2009-11-15から1日間の記事一覧

「希望なくしては人は死の中にある。しかもあの貧しい人たちは死のやうにつらい仕事のなかに、生活のなかに、僅かに死を回避してゐるのだ。死の心にかへる死の労働。」(風の章)

これは仕事とか労働というものを貧しい人たちは死のようにつらいことをしていると捉えているわけです。死のようにつらいから心を無感覚にして耐えている。じゃあ無感覚になれば吉本が25歳くらいだった頃の敗戦後の社会に希望の感覚があるかというと、ありゃ…

「僕は一つの基底を持つ。基底にかへらう。そこではあらゆる学説、芸術の本質、諸分野が同じ光線によって貫かれてゐる。そこでは一切は価値の決定のためではなく、原理の照明のために存在してゐる。」(原理の照明)

なにが原理なのか、一番普遍的な真実はなにか、ということが吉本の若い頃からの関心であったと思います。私が吉本が提出した原理的な思考のなかで、いま一番気になりよく考えるのは、吉本のもとの文章が見つからないので引用はできませんが、要するに知とい…