2009-10-11から1日間の記事一覧

「僕が何よりもこの著書について驚嘆を禁じ得なかったことは、それが感性の高次な秩序を要求するといふことであった。僕は、この点についての多くの信者たちの悪循環をよく知ってゐるし、彼等に悪循環をさえ要求するような見事なマルクスの思想も知ってゐた。唯、僕が何故その悪循環を経験しなかったかと言へば、それは、僕の全く対蹠的(注・たいしょてき。正反対の位置関係にあること)な部門についての少しの修練があったからである」(カール・マルクス小影)

感性の高次な秩序を要求するというのはどういうことか。まず、資本論に表現されているマルクスの思想は何百年、何世紀というような時間の幅の上に成り立っているわけです。そういう大きな時間の中で自分のいる社会を考えるということ自体が感性を変えるでし…

「若し、現象を論理的に解明しようと欲するならば、この基本反応(注・動因を原理的なものに還元すること。帰納法のこと)に、若干の偶然的要素を加へて、各人がなすべきところのものであると思ふ。資本論は、正しくこのやうな抽象的といふことの持たねばならぬ重要さを具へてゐたと言ふことが出来る」(カール・マルクス小影)

この文章は前々回の解説でも引用したので同じことを繰り返す感じですが、要するに原理的な考察を行うときには具体的な現実の現象の分析から始めるわけです。マルクスも大英図書館にこもって膨大な歴史資料の山から現象の背後にある原理的な法則を発見しよう…