2009-08-06から1日間の記事一覧

「〈僕の歴史的な現実に対するいら立ちの解析〉①要するに、根本にあるのは、僕の判断、正当化してゐる方向に現実が働いてゐないといふことから来るもの。②具体的には世界史の方向。③日本における政治経済の現状。僕が現実を判断する場合に、現実なるものが二重構造を持ってゐて、この断層が決定的である」(断想Ⅰ)

これは吉本が現実に対していらだっていることの要因をあげているわけですね。しかしまずもって「歴史的な現実にいらだつ」ということがピンときませんね。このあたりで分かったようなふりをすることが嫌です。分かったようなふりをすれば、知の中に入ること…

「いら立ちといふのは精神の剥離(はくり)感覚である。④僕の判断を実証することが、日本の国において殆んど不可能であるといふこと。⑤僕らの国の権威者によって典型的に表現されている劣等性が、僕に与える自己嫌悪と共鳴現象を呈する。⑥強制的に採用されてゐる日本における経済政策が、貧窮階級の意識的な無視によって行はれてゐること。⑦占有せられた現実。他律的な現実において僕の自律的な判断が占めるべき場所を有しないこと。」(断想Ⅰ)

吉本の中上健次という小説家に対する追悼文をおまけに書きます。私が言いたいことはこのきわめて優れた追悼文の行間にあります。 「中上健次」 吉本隆明 (前略)わたしはこの世の礼にかかわって、かれがのこした人柄と作品の印象をいそいでかきとめなくては…