2009-03-03から1日間の記事一覧

「世には弱しい魂の主人がゐて、薄暗い軌道しか歩まないやうになってゐる。僕は、そのひとのためにのみ何かを語るようになりたい」(夕ぐれと夜の言葉)

弱々しい魂の主人というのは、やはり胎児期、乳幼児期に母親との関係で深くついた傷を無意識の中に宿している人、ということになるかと思います。そういう人の歩む薄暗い軌道というのは内面の軌道であって、内向的であり、おどおどしていて、万事受身であっ…

「この国の社会様態は、中世人と現代人とを同時に共在せしめてきた。今や、経済的悲惨は、個々の人々を分裂せしめてゐる。即ち、生活様態は中世的に、頭脳は現代的に。 且てこの分裂は、知識人と労働者階級との間の分裂であり、同時に均衡であったが、今や、個々人の内部における思想と様式、現実と精神の分裂をうながしてゐる。即ち、四重の双極子分裂の状態が、この国における形而上的な表情である」(中世との共在)

日本の中世的っていうのは、要するにアジア的ということだと思います。現代的というのは欧米的ということでしょう。かってそれはインテリは欧米の模倣を行い、大衆はアジア的な生活と思想の中にいた。でも社会全体が次第に欧米的になっていって、個々人の中…