2008-09-24から1日間の記事一覧

「わたしは決して眠りたいとは思はない。限りない覚醒を欲する。わたしが覚めきったまま、わたしの死をむかへる、そのやうな一種の凄愴(せいそう)な光景を思いうかべる」(断想Ⅵ)

これは醒めていたい、ということを言っているわけです。醒めるというのは、言い換えれば対象と一体化したり、対象に包み込まれたりしないで、対象を突き放して認識する精神の態度です。それは西欧的な学問・思想・科学の態度と言えます。その果てに、自分の…

「信仰といふのは一種の収斂性。精神の収斂感覚である。人は信仰によって何を得るか。ひとつの不均衡である」(断想Ⅵ)

これも吉本自身の戦争中の信仰体験が回想されているのだと思います。死と取り替えられるかという、ぎりぎりの一点に収斂して問い詰められたところに生き神様としての天皇への信仰があらわれた体験です。 吉本は「一言芳談抄」という日本の中世の有名無名の宗…