2008-03-16から1日間の記事一覧

「僕は現実の社会なるものが、独りの人間に無限の可能性を以って、あらゆることを汲み尽す場を提供するものであると思ふ。しかも、それは他との関連なしにも。」(下町)

以前にも書きましたが、吉本は工科の大学を卒業した化学者です。自然科学の考え方が身についているのが吉本の特徴です。科学は自然の中から法則を発見しますが、自然を把握し尽くすことはできません。しかし把握しつくそうという欲望がなぜか人間の中にある…

「人間の精神には元来信ずるという機能は存在しないのだ。だが、このことを血肉化するのは容易ではない。僕が当面してゐる第一の問題であるといふことが出来る。」(下町)

信じるというのは何かの絶対性を疑わないということです。一方、考えるというのは疑うということに等しい。そして考えるということは常に未知に向かうということです。例えば政治について考えるのは、政治を疑うからです。そして新聞やテレビで流通する通念…